劇団シニアグラフィティ第5回公演・昭和歌謡シアター「東京」

稲葉貴子

稲葉さんの見せ場は能見達也さんとの熱演のシーンです。
まずは高校卒業の謝恩会シーン。ふたりでペアダンスを踊ります。能見さんはタキシード、稲葉さんは白いドレスに身を包み、華やかでダイナミックなダンスです。稲葉さんの頑張っている笑顔がとても輝いて見えました。
もうひとつは、上京して18年後、廃校が決まった母校のグラウンドに一緒に来て欲しいと稲葉さんが能見さんを説得するシーンです。劇中で最もシリアスな場面のひとつです。能見さんはダンサーになる夢が破れチンピラ生活に至った経緯を、稲葉さんは18年前、能見さんのために人を陥れてしまった過去を告白します。そしてふたりの心が通じ合い、18年振りのペアダンスを踊ります。ここでのダンスはモーニングのミュージカル「リボンの騎士」で、フランツと亜麻色の髪の乙女が踊ったそれのように切なく美しいものでした。
能見さんが稲葉さんを抱き寄せます。そしてキスシーンへ・・・ところが笑いあり涙ありの軽演劇、すんでのところでふたりを照らすスポットライトを逸らすというオチをつけ、シリアスな場面が一転して笑いのシーンとなります。ほんとにキスしちゃうのかとドキドキしながら見ていましたので、正直ホッとしました(笑)。
このお芝居は稲葉さんの今までの出演作品の中で最も出演シーンが多い作品かもしれません。歌、演技、ダンスを十分に堪能できました。早くDVDが観たいです。