続・続かおりん握手会

飯田圭織

トークが終わり、いよいよ握手です。1列目のヲタが立ち上がってステージに上がりました。そして1人目の握手のとき、場内に軽くどよめきが起こりました。長い!軽く10秒は超えてたんじゃないでしょうか。かなり低速握手会です。どのヲタもけっこうしゃべっています。飯田さんの隣に女性の係員がいたのですが、彼女もにこやかにヲタの話を聞いています。ヲタの腰を押して列を流す係員もいるのですが、あまり出番がないようです。


場内前の方から係員の指示に従って、1列ずつヲタが立ち上がってステージに上がります。自分は前の方にいたので、自分の列の番はすぐやって来ます。立ち上がって、持参したファミレスの紙おしぼりで汗ばんだ手を清めてステージに上がりました。低速握手会とは言え、ステージに上がったらすぐ自分の番になりました。
飯田さんの目の前に立ち、白く細い手を握りました。握ったというよりも手を添えたって感じでしたが、それでも飯田さんの手の柔らかさは十分感じられました。そして僕は、一言一言落ち着いて明瞭に言葉を発するように心がけてこう言いました。


横浜アリーナのラスト行けないかもしれないんですけど、これが最後じゃないと思うんで、これからもずっと応援していきます。」


飯田さんは、僕の瞳を覗き込むかのような眼差しで僕の言葉を聞いてくれましたが、僕は緊張感と、言うべきことを言い切った安堵感からか、言い終わってすぐ飯田さんから視線を離してしまいました。そのとき飯田さんが何か言ってくれたような気がするのですが、残念ながら放心状態で全く覚えていません。


握手を終えてすぐ外に出ました。すると放心状態で空っぽになった僕の心に、飯田さんと握手できた感激やら感激やらがこみ上げてきました。自分の顔がニヤけているのがわかります。ニヤニヤが止まらない握手後です。握手が終わったらすぐ、携帯からミクシィにレポを打つつもりだったのですが、とてもそんなことができる精神状態ではありません。このままでは現実の世界に戻れません。僕は胸の高まりを鎮めるべく、目の前に続く道を歩き始めました。自分が今どこにいて、どこに向かって歩いているのかもわからず、動きを止めると死んでしまう回遊魚のように、ただひたすら歩かずにはいられませんでした。


おわり