続々・稲葉貴子スポーツフェスティバル

稲葉貴子

さて、200レベル4列目・白組ベンチ裏・選手入退場通路脇という、この会場の中で最も恵まれた席において、メンバーからレスをもらうチャンスはいくらでもありました。しかし、ひとりに声をかけたら全員に声をかけたくなります。稲葉さんに「あのおっさん誰にでも声かけてるやん」と思われるのは避けたかった。そこで、声をかけるのは稲葉さんひとりに絞って、チャンスを伺うことにしました。実際、そのチャンスは何回か訪れて、そのたびに「アツコー!」と叫んだのですが気付いてもらえません。
稲葉さんにレスをもらえないまま、全ての競技が終了し、ライブも終わりました。メンバー全員が入退場口の方に戻ってきて、僕の正面、白組ベンチ裏に全員がやってきました。これが最後のチャンスです。しかし稲葉さんは前に出ることなく控えめな立ち位置です。おそらく稲葉さんはずっとあややコンやごっちんコンのサポート役としてステージに立ってきましたから、自分が目立ってはいけない、もちろん自分の出番は精一杯こなすけれども自分はあくまでも引き立て役、というポジションが身に付いているのでしょう。
僕はこの日一番の大声で稲葉さんの名前を叫びます。しかし稲葉さんの立ち位置が少し遠いうえ、周りの客もそれぞれの推しメンにコールするのに必死なので、それらにかき消されてかやはり稲葉さんに気付いてもらえません。
メンバーが場内を歩いて一周し始めました。稲葉さんは行ってしまった。とうとうレスをもらえずに終わってしまった。いや、待てよ、一周したらまたここに戻って来るぞ!そうです、一周して戻ってきて、僕の左脇の通路を通って退場するはずです。その時が最後のチャンスです。
メンバーが一周している間、これまで稲葉さんからレスをもらえなかった敗因を考えてみました。ちょっと距離が離れていたかもしれない、僕の声が小さかったかもしれない、稲葉さんがたまたま他の事に気を取られていたかもしれない・・・そしてもしかしたら、「アツコー!」と名前を呼び捨てにしているのが失礼にあたるのかもしれない(笑)と。
そして、長い長い一周を終えて、メンバーが戻ってきました。
つづく。