8/15(土)夜、水木英昭プロデュースvol.8「眠れぬ夜のサバイバル・パーティー〜SO SOLDIER〜」@全労済ホール スペース・ゼロ

3日間の山中サバイバル実習訓練中の自衛隊員4名。リーダーの豪士、豪士に思いを寄せるサキ(稲葉さん)、お調子者の飛葉、心優しいアムロ。彼らが野営中に、道に迷った民間人の楠一家に出会います。方向音痴で頼りない父親の源一郎、しっかり者の娘・菜津江、短気な息子・猛、母親を早くに事故で亡くしているため菜津江を母親のように慕う息子・一樹。隊員たちは楠一家と行動を共にすることになりました。


豪士は幼い頃父を亡くしています。同じ自衛隊員だった父は、ある大物政治家の護衛の任に就いていたとき自殺したとのこと。そのためか豪士は、今自分も自衛隊員であるものの、隊内での出世欲は無く、朝、いってきますと仕事に出かけ、夕方、ただいまと家に帰り、休日には公園で息子とキャッチボールをするような家庭を築く夢を持っています。そんな豪士にサキは、自分の夢は朝いってらっしゃいと夫を見送り、夕方お帰りなさいと夫を出迎え、休日にはおにぎりを作って公園に行き、夫と息子がキャッチボールをするのを眺めるのが夢だと語ります。お調子者の飛葉は、楠家の菜津江にちょっかいを出してはお姉ちゃん子の一樹に睨まれる軽薄ナンパ男。子どもの頃家族全員を事故で亡くしたアムロは、他の隊員を家族のように慕うとともに、一樹とも交流を深めます。


隊員と一家は、アムロと菜津江を留守番に残して見回りに出ます。アムロは菜津江と過ごすひとときに、おそらく自衛隊生活では得られない安らぎや暖かさを感じていたまさにその時、菜津江がアムロの背後から延髄あたりに針を刺し、アムロの視神経を奪います。これが実に衝撃的なシーンでした。というのはこのシーンまで楠家はちょっとクセがあるものの基本的には善良な民間人一家としてコミカルに描かれており、その中でも最も真面目で良識を感じさせる菜津江が一転、殺人鬼に変貌するギャップ。見事な演出です。
菜津江はアムロの視力を奪ったものの、トドメを刺すまでには至りませんでした。楠家では「失敗」した者は生きて行けないと源一郎が言います。表向きは事故で死んだとされている母親も、実は「失敗」したために源一郎に殺されており、菜津江も同じく源一郎と猛によって殺されます。


他の隊員にも楠家の魔の手が伸びます。源一郎・猛がサキと格闘の末、サキを崖から転落させます。そして豪士・飛葉と源一郎・猛との対決。そこで事の真相が明らかにされます。実は豪士の父は自殺ではなく、代々刺客の家系である楠家の源一郎に殺され、幼い豪士がその場に居合わせていたということ。そして今、源一郎の狙いは、豪士の父を殺したときに一緒に殺すことができなかった豪士を殺すこと。そのために豪士たち4名の訓練中に通信の途絶えた山中で豪士たちに接触し、豪士と他の隊員をも殺すことだったのです。
殺すか殺されるかの凄絶な戦い。長い格闘の末、飛葉が猛を倒し、源一郎が飛葉を倒します。豪士も力尽きたところで一樹が現れます。源一郎は一樹に、楠家の一員としてお前が豪士にトドメを刺せと促しますが、姉・菜津江を殺された恨みから逆に源一郎を刺し殺します。


戦いが終わりました。そこに崖から転落させられたサキが最後の力を振り絞って戻ってきて、愛する豪士のもとで息を引き取ります。戦いの場面に居合わせていなかったアムロも戻ってきました。目が見えず状況がわからないまま、みんな無事だという豪士の、おそらくは最後の力を振り絞った言葉を無邪気に信じて喜びます。一樹は、アムロたち4人の写真を撮ってその場から立ち去って行きました。


場面が変わり、アムロの回想セリフ。救助され、その後順調に視力が回復したこと。救助されたとき、その場には自分しかいなかったと聞かされたこと。でも確かに他の3人もその場にいたということを知っている。なぜならその後、1通の差出人不明の手紙が届き、その中に自分と豪士とサキと飛葉が写った写真が入っていたこと。みんなどこへ行ったのかな。これからまた自衛隊で新しい家族を作らなきゃ。


以上があらすじです。コミカルな楠家が殺人鬼に変貌してからは、実に凄惨な物語となりました。救いがあるとすれば、ひとつは豪士とサキ。天国で、きっと平凡で幸せな家庭を築くことでしょう。そしてもうひとつは生き残ったアムロ
ここからは想像ですが、もしかして、家族のいない悲しみを乗り越えて生きるアムロの心優しさに触れた菜津江は、わざとアムロにトドメを刺さなかったのではないか。視力のみ奪うことにより、これから起こるであろう惨劇に加わらず生き残れるようにと配慮したのではないか。
また一樹も、上のあらすじには書かなかったのですが、最後の戦いの前にアムロを散歩に連れ出したのはアムロに事件の真相を見せないようにする配慮だったのではないか。もしアムロが事件の真相を見て、知ってしまったならば、事件を隠したい自衛隊やもっと大きな権力に抹殺されることになる。そしてもしかしたらその任を負うのは、刺客の家系である楠家、その最後の一人である自分なのかもしれないから。




最後に稲葉さんについて。格闘シーンはどうしても身長的には見劣りするものの、逆に言えばそのハンデを乗り越えての出演ということは、それだけの力量があるということ。小さくても迫力があります。特に縄を振り回す相手との格闘シーンは、縄危ないよ縄!もし顔に当たったらどうすんの?と、ハラハラドキドキでした。稲葉さんの舞台を見るといつも思うのだけれど、これをハローのメンバー全員に見てほしい。特に若いメンバーに見て刺激を受けてほしいものです。そしてたとえば20年後、今のエッグの中で今の稲葉さんと同じくらい歌って踊れてアクションができて芸能活動を継続しているメンバーがひとりでもいたら嬉しいなと思います。