ハロプロ楽曲大賞2007

楽曲部門1位:はなをぷーんきら☆ぴか

この曲はタイトルでもある「はなをぷーん」などいくつかのユニークな言葉が耳に残り、かつ全体としてよく耳に馴染み覚えやすい歌になっています。それはこの曲が、破格の妙味を併せ持つ優れた定型詩のような構成になっているからです。これは今年の1位のみならずハロープロジェクト10年の歴史においても最高傑作の部類に入るのではないでしょうか。


曲の構成は、次のような流れを中心としています。
・頭のサビ:主題を提示(「はなをぷーん」を唐突に提示し聴者の興味を喚起)
・Aメロ:主題を展開(「はなをぷーん」の具体的発動事例)
・Bメロ:一転して鼻にまつわる考察(鼻の形状、役割、組成など)
・終わりのサビ:再度主題を提示(まとめ)


これはいわゆる「起承転結」のような構成ですが、「起」と「結」が同じですから「結承転結」と言った方がいいかもしれません。まず主題を結論として提示し、例を挙げて結論を補強し、異なった角度からの見方も提示することにより、主題がさらなる説得力を得て最後に再提示されています。


ただし「はなをぷーん」は論説文ではありません。芸術です。綴られる言葉にはメロディーとリズムが与えられています。そこで言葉のリズムと言えば代表的なのが「七五調」です。七五調は短歌や俳句など日本の伝統的定型詩に用いられ、日本人の耳に慣れ親しんだリズムです。慣用句、流行り言葉、CMのキャッチコピーなどにも多く見られます。何かを語呂合わせで暗記する場合も七五調のリズムに乗れば覚えやすく忘れにくいのです。
さて「はなをぷーん」の歌詞に注目してみると、ほのぼのと耳に馴染むAメロ・Bメロは見事に7、5、7、5・・・の繰り返しです。これがこの曲全体の安定した土台の役割を担っています。
サビは5、5、7、5になっています。日本人の耳に心に染み込んでいる俳句の形式を含み、さらに初句を繰り返すことにより西洋音楽の形式と調和しています。


なお、このA・Bメロとサビとでは「はなをぷーん」というフレーズの処理の仕方が違うのも芸が細かいところです。A・Bメロでは「はなを」と「ぷーん」の間に1拍置いて「はなをぷーん」を5音とし、規則正しい安定感を生み出しています。ところがサビの初句と二句ではそこに休符を置かずに歌うために「はなをぷーん」が4音となり、それが躍動感を、それもちょっと前のめりでどこかへ飛んでいってしまいそうな躍動感を生み出しています。


さて、サビ〜A〜B〜サビの七五調で貫かれた「結承転結」の展開に、CメロDメロが定型の様式に対する破格として加わります。Cメロは歌詞の内容でBメロを継承しながら(鼻にまつわる考察を日本文学史や世界史を題材にして)言葉のリズムに変化をつけています。
Dメロの展開は実に秀逸です。「ハナは流れてピロロンピー」は言葉のリズムは七五調を踏襲しつつも歌詞の内容は結承転結の流れから完全に逸脱しています。これを繰り返しながらキーを上げて行くところは、遊園地の垂直落下式遊具に乗って上昇するような不安と緊張があります。「あと何分?あと1分」は最高地点に達して落下までのカウントダウンのようです。そして「はなをぷーん」で一気に落下すると何事も無かったかのようにBメロにつながり、安定の七五調に戻ります。


以上のように、この曲は安定した結承転結と破格の妙味が並立しています。それぞれが互いを際立たせることにより、勢いだけのコミカルな歌にとどまらない深い味わいのあるものに仕上がっています。「美は乱調にあり」と言われるように、論説文のような定型論理展開に「ピロロンピー」が闖入するのはまさに美であり芸術です。「ピロロンピー」に意味を求めてはいけません。人間は意味という病に冒されているのです。芸術は本来無意味なものだということをこの曲は教えてくれます。


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