ラジオ深夜便

帰りのタクシーでかかっていました。アナウンサーが女性のゲストにいろいろ質問しているようでした。そのゲストはどうやら歌手のようでした。音量が小さくてあまり聞こえなかったので特に気にも留めず、近所のコンビニに着いたので車から降りました。コンビニに入ると、そこでもラジオ深夜便がかかっていました。ゲストの歌手の方の曲がかかりました。とても美しい歌声とピアノの伴奏で「月夜の晩に、ボタンがひとつ〜♪」あれ、どっかで聞いたことある詩だなと。中原中也の詩でした。


「月夜の浜辺」


月夜の晩に、ボタンが一つ
波打際に、落ちてゐた。


それを拾つて、役立てようと
僕は思つたわけでもないが
なぜだかそれを捨てるに忍びず
僕はそれを、袂(たもと)に入れた。


月夜の晩に、ボタンが一つ
波打際に、落ちてゐた。


それを拾つて、役立てようと
僕は思つたわけでもないが
 月に向つてそれは抛(はふ)れず
 月に向つてそれは抛(はふ)れず
僕はそれを、袂(たもと)に入れた。


月夜の晩に、拾つたボタンは
指先に沁(し)み、心に沁みた。


月夜の晩に、拾つたボタンは
どうしてそれが、捨てられようか?


帰宅して、ラジオ深夜便の番組表を調べてみました。その歌手は深川和美さんというソプラノ歌手でした。さらに検索して「月夜の浜辺」のサンプル音源を見つけました。美しい曲です。終電をなくして夜道をひとり歩いている友人に聴かせてあげたかいと思いました。あいにく曇っていて、月も星も見えない夜空でしたが。